「何度塗ってもすぐサビが出るんだよね・・・。」
この様なご質問、とても多いんです。
塗装業者に相談すると「もっといいサビ止塗料で塗らないとダメですよ!」
「上塗り塗料も高級塗料をオススメします!」と返ってくるそうです。
果たしてそうでしょうか・・・。
確かに上質な塗料を塗ると耐久性が上がるとカタログにも記載してあります。
しかしそれは正しく施工をする前提なのです。
では具体的に赤錆を防ぐにはどうしたらいいでしょう。
- 酸で洗う
- 錆止め塗料を塗る
- 酸素を遮断する
- 水を遮断する
等が考えられます。
【酸で洗う】
主にリン酸を使います。
各メーカーからリン酸を主成分とした商品が出ておりますが、
リン酸は空気よりも鉄と反応しやすいためリン酸塩となり皮膜となって赤錆を発生しにくくします。
すでに発生している赤錆にも効果があります。
【錆止め塗料を塗る】
「錆止め塗料が錆をやっつける話か。」と思われるかもしれませんが・・・
残念ながら一般的に錆止め塗料にはそのような効果はありません。
☓ サビの進行を止める塗料
○ サビが出ないようにする塗料
なのです。
錆が出てしまっているところに塗っても錆は水分を吸って、
しかも空気の層を作ってますので中で酸化してしまいます。
防錆塗料と表記した方が適切かもしれませんね。
通常、塗料というものは顔料が入っており、これで色を出しているわけですが
防錆塗料では防錆効果を持った物質を顔料として使用しています。
アルカリ性の塗膜を作って腐食反応を止めている製品が多いのですが
酸性塗膜のベンガラ等は防錆効果が低いのでお薦めしておりません。
現在では接着剤にも使われていますエポキシ系が主流です。
【酸素、水を遮断する】
錆をそのまま封じ込めてしまう塗料です。
錆に浸透させ固めて空気、水を遮断します。
数回の塗替えを行われていらっしゃいますと、錆の上から錆止め効果の低い塗料を塗って
しまっているかもしれません。
気泡の穴などから水や酸素が侵入して腐食が進んでいる事も考えられます。
錆が露出していましても何層にもなっているかもわかりません、
その様な状態でどんなに浸透力が高い薬品を塗っても中までちゃんと浸透できているかは疑問ですし、
歩行する様な所で完全に腐食していますと命にも関わります。
使用する時は錆の度合いをきちんと確認してからでなければなりません。
錆は場所場所で進行具合が違います。
錆を落とすという事は進行度合いを把握する事でもあります。
とても大切な工程という事がご理解頂けたと思います。
以上の様な理由から、基本はワイヤーブラシや回転サンダー(電動工具)等で錆を落とすという事になります。
塗膜の浮きを削り落とし、ブラシや工具の入らない所、使えない所や素地調整で除去しきれない錆に使用します。
■サビの種類について
一口に錆と言いましてもいろんな種類がございます。
赤錆、黒錆が有名ですね。
赤錆は水分と空気中の酸素によってできる皆さんご存知の錆です。
一方、熱した鉄に酸素がくっついてできる黒錆は赤錆を防ぐ役目をします。
中華鍋等は使用前に熱して黒錆を付けると言われています。
鉄瓶が錆ないのも黒錆に守られているからなんです。
錆は全てが『悪』では無い事をご理解ください。
むしろ錆を防止するのは錆だったりします。
このへんがややこしいところなのですが、ここをご理解頂けたら
塗料の選定にお悩みになる必要が無くなるかもしれません。
錆が発生する理由は?
では錆はどうして生まれるのでしょう。
鉄Feは自由電子と呼ばれるe--がセットになっているとお考えください。
この状態は空気が乾燥していれば安定しております。
ですが雨や湿気が付着してしまいますと事態は急変します。
その水分はもちろん空気に触れていますので空気中の酸素が水分に吸収されます。
水と酸素。これは理科の授業でよく出てきますので分かりやすいと思いますが
化学反応を起こしますので電子が必要になります。
それを鉄から取り込むんですね。
水の中には、OH-の陰イオンができますが、鉄は電子を取られちゃいますので
Fe3+の陽イオンに変わって水の中に溶け込みます。
そうするとOH-とFe3+が結合してFe(OH)3
水酸化鉄になりやがて水、H2Oが無くなるとFe2O3酸化鉄に・・・。
このFe2O3酸化鉄こそが赤錆と呼ばれているものなのです。
水に強電解質である塩が加わると錆の発生が促進されてしまいます。
車で融雪剤(塩化カルシウムや塩化ナトリウム等)の撒かれた所を走ると洗車したほうが
いいと言われていますね。海辺の鉄部が錆びやすいのも納得して頂けると思います。
現在では酸化鉄は
酸化鉄(Ⅱ)や酸化鉄(ⅡⅢ)等の表記が使われておりますが少々ややこしいので昔ながらの呼び名で・・・
まず酸化第一鉄 FeO
黒色粉末でシュウ酸鉄を真空にして加熱するとできる物質ですが天然には存在しません。
続いて酸化第二鉄。
Fe2O3 いわゆる赤錆です。
鉱物の赤鉄鉱もこれに当たります。
製法により数色ありますが赤色粉末はベンガラと呼ばれて古くから錆止め、塗料に使われています。
それから四酸化三鉄Fe3O4
いわゆる黒錆です。
顔料等にも使われています。
酸化鉄と言いましてもいろいろです。
鉄は元々は鉄鉱石からできていますが、実はこれは酸化鉄の結晶なのです。
酸化鉄から酸素を奪って鉄の液体をつくり炭素量を調整して鋼(スチール)になります。
一般的に鉄と呼ばれるものはこの鋼を指します。
ここで不思議に思われるかもしれません。
原料の鉄鉱石は酸化鉄。いわゆる赤錆も酸化鉄。
鉄Feは酸素と結び付く性質があり、酸素がある地球上では酸化鉄が安定している形なのです。
『安定した形』。つまり自然な形ですね。
錆というのは実は鉄が元の酸化鉄に戻ろうとしているのです。
地球上の全ての金属は酸素に触れていますので表面だけ酸化膜というものになっています。
この酸化膜が金属を守っているわけなのですが鉄に付く酸化膜(赤錆)は
ちょっとした振動でぽろっと取れてしまいます。
そうすると新たに鉄の表面が顔を出し、また錆が・・・この繰り返しで錆の層が出来上がってしまいます。
しかも水にも溶けやすいので厄介です。どんどん腐食が進むわけですね。
錆びにくい鉄というのも存在しますが・・・ステンレス等はまさにその名の通りステインレス。
ステイン(汚れ、錆)レス(~しない)。
鉄にクロムを混ぜてあり、このクロムが表面で酸素と結合して赤錆を防いでいます。
切断しても断面が瞬時に皮膜を作ってくれるという夢の様な材料ですが加工のしにくさ、
コストの面で住宅では不向きです。残念です。
やはり現在多く使われている鋼(スチール)を長く保持する事を考えていきましょう。
■まとめ
- 錆を全て削り落とす。
- 落とせない所は薬品洗い、もしくは錆の上から塗れる浸透性防腐塗料を使う。
- 全体を錆止め塗料で塗る。
- 上塗りをする。
基本的に錆止め塗料は紫外線に弱いので耐候性の良い上塗り塗料を必ず塗らないといけません。
最近では錆止め配合塗料等がありますが・・・
洋服で例えると服一枚でどうにかしようとしている様なものです。
やはり下着、上着とそれぞれ特化した服を着たほうがいいですよね。
塗料も鉄への食いつきに特化した材料、耐候性に特化した材料の2段重ね(場合によっては3段、4段)が有効です。
一枚であれもこれもだとどっちつかずになってしまいます。
塗装膜の厚さも重要です。基本、塗膜は酸素や水分を通してしまいます。
厚くなれば通過する酸素量も減ってきますので、この辺も1回塗りをお薦めしない理由なのです。
腐食の進んだ錆を落とすという作業はかなりの時間と労力がいりますので金額が跳ね上がってしまいます。
最悪、交換等が必要になりますので早め早めの塗装がトータルでみますと安上がりになります。
塗料の性能を見比べてお悩みになるより正しい知識を持った信頼できる業者を選ぶという事に
重点を置かれた方が最善だと思います。
そうした上で、「ここはよく歩くところなんだよね」や「ここはよく雨が溜まります」等の情報を提示され、
業者と一緒に最適な塗料を選定していかれてください。
正しい知識を深く持った業者というのは説明もわかりやすく丁寧なものです。
これも業者選定の基準の一つになりますね。
長々と書きましたが・・・
塗装=建物を守る。という事をご理解頂き、
マイホームを長持ちさせる為、お役にたてましたら幸いです。
最後までお読み頂き誠にありがとうございました。
断熱塗料のGAINAを筆頭に高機能・高付加価値塗料の施工に自信を持っています。
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